BRITISH SPIRATION : Wrapped in a versatile peacoat
船の上から、都市生活まで。
November 14th,2024
JOURNAL
TIME TRAVEL THROUGH ART
Celebrating 240 years
with Melissa White, British mural artist
September 2nd, 2024
人類は、さまざま方法でみずからの「ルーツ」を物語ろうとしてきました。当たり
前ですが、ルーツとは、自らが生きている時間をはるかに越えた遠い昔のこと。想
像力を駆使しながら、口承、書物、絵画や彫刻といった視覚表現を通して、みずか
らがよって立つ過去を未来へ受け継いできたのです。
壁画は、その記録の媒体としては特にプリミティブなもののひとつでしょう。現代
において、絵は、持ち運べるキャンバスがメインになりましたが、以前は、たとえ
ば教会の壁に描かれるなど、建築と一体化していました。識字率の低かった時代に
は、それが聖書の役割を果たしたのです。
ジョン スメドレーは、今年、創業240周年を祝い、また、ブランドの歴史を未来へ
伝えるために、イギリスで制作を行うアーティストのメリッサ・ホワイトさんに壁
画の制作を依頼しました。このコラボレーションは、ジョン スメドレーのチームが、
工場の位置するリーミルズ近くのホテルで、彼女の作品と出会って感銘を受けたこ
とからはじまりました。
人類は、さまざま方法でみずからの「ルーツ」を物語ろうとしてきました。当たり前ですが、ルーツとは、自らが生きている時間をはるかに越えた遠い昔のこと。想像力を駆使しながら、口承、書物、絵画や彫刻といった視覚表現を通して、みずからがよって立つ過去を未来へ受け継いできたのです。壁画は、その記録の媒体としては特にプリミティブなもののひとつでしょう。現代において、絵は、持ち運べるキャンバスがメインになりましたが、以前は、たとえば教会の壁に描かれるなど、建築と一体化していました。識字率の低かった時代には、それが聖書の役割を果たしたのです。
ジョン スメドレーは、今年、創業240周年を祝い、また、ブランドの歴史を未来へ伝えるために、イギリスで制作を行うアーティストのメリッサ・ホワイトさんに壁画の制作を依頼しました。このコラボレーションは、ジョン スメドレーのチームが、工場の位置するリーミルズ近くのホテルで、彼女の作品と出会って感銘を受けたことからはじまりました。
彼女の作品は、ある特定の場所に、幾重にも重なった歴史や物語をリサーチし、デ
ザインに反映させる点にあります。イングランド中部にあるシェイクスピアの生家
など、歴史的建造物の装飾を再現する仕事からキャリアをスタートさせた彼女は、
エリザベス朝時代に描かれた壁画を研究するなかで、エイジング加工や、時間の経
過を表現するディストレス加工を身につけたといいます。それは「時間の艶」を表
現する技術だそう。
依頼を受けたとき、彼女は、工場近くに広がるピーク・ディストリクトと呼ばれる
イギリス最古の国立公園の幻想的な風景を、壁画のなかに作り出そうと見通しを立
てていました。しかし、実際に工場のあるリーミルズを訪れ、滞在をして旅をする
うちに、考えに変化が起こります。なだらかな丘陵地帯、緑豊かな牧草地、美しい
小川。
彼女の作品は、ある特定の場所に、幾重にも重なった歴史や物語をリサーチし、デザインに反映させる点にあります。イングランド中部にあるシェイクスピアの生家など、歴史的建造物の装飾を再現する仕事からキャリアをスタートさせた彼女は、エリザベス朝時代に描かれた壁画を研究するなかで、エイジング加工や、時間の経過を表現するディストレス加工を身につけたといいます。それは「時間の艶」を表現する技術だそう。
依頼を受けたとき、彼女は、工場近くに広がるピーク・ディストリクトと呼ばれるイギリス最古の国立公園の幻想的な風景を、壁画のなかに作り出そうと見通しを立てていました。しかし、実際に工場のあるリーミルズを訪れ、滞在をして旅をするうちに、考えに変化が起こります。なだらかな丘陵地帯、緑豊かな牧草地、美しい小川。
彼女はのちに「壁画の制作はすべて、この旅から始まった」と語りました。彼女は、
そこで何を見つけ、何を感じたのでしょうか。そして、どのように、壁画の細かな
部分へと、ジョン スメドレーの歴史を描き入れたのでしょうか。
彼女はのちに「壁画の制作はすべて、この旅から始まった」と語りました。彼女は、 そこで何を見つけ、何を感じたのでしょうか。そして、どのように、壁画の細かな 部分へと、ジョン スメドレーの歴史を描き入れたのでしょうか。
「リーミルズに着いてすぐに、ゆるやかに広がる丘陵と小川が創り出す風景に魅了
されました。しかし、数日、そこで過ごすうち、工場にある風変わりな細部にも惹
かれていったのです」。たとえば、その細部の一つが、工場の廊下の床に貼られた
牛革です。これは工場内を走り、荷物を運んだ台車から床を守るためのもの。
「ジョン スメドレーというブランドには、家族の伝統が息づいていると実感しまし
た」。彼女はもちろん、工場を訪れる前からジョン スメドレーが創業以来、スメド
レー家族と職人たちの協力で築かれてきたブランドであることを知識として知って
いました。しかし、実際に工場を訪れ、床、壁に残る痕跡、その工場のなかで聞こ
えてくる従業員同士の会話から、その伝統を肌身に感じたのです。
「リーミルズに着いてすぐに、ゆるやかに広がる丘陵と小川が創り出す風景に魅了されました。しかし、数日、そこで過ごすうち、工場にある風変わりな細部にも惹かれていったのです」。たとえば、その細部の一つが、工場の廊下の床に貼られた牛革です。これは工場内を走り、荷物を運んだ台車から床を守るためのもの。「ジョン スメドレーというブランドには、家族の伝統が息づいていると実感しました」。彼女はもちろん、工場を訪れる前からジョン スメドレーが創業以来、スメドレー家族と職人たちの協力で築かれてきたブランドであることを知識として知っていました。しかし、実際に工場を訪れ、床、壁に残る痕跡、その工場のなかで聞こえてくる従業員同士の会話から、その伝統を肌身に感じたのです。
こうしたユニークな細部とは「大きな歴史」のなかでは記録されることのなかった
ものであり、実際に訪れなければ、知ることができなかった時の痕跡です。ささや
かでありながら、創業時から現代にかけて残っている、こうした細部を見逃さない
こと。そうした彼女の姿勢は、ブランドについての歴史を誠実に語るならば、小さ
な物語も不可欠だと感じたからかもしれません。
こうしたユニークな細部とは「大きな歴史」のなかでは記録されることのなかったものであり、実際に訪れなければ、知ることができなかった時の痕跡です。ささやかでありながら、創業時から現代にかけて残っている、こうした細部を見逃さないこと。そうした彼女の姿勢は、ブランドについての歴史を誠実に語るならば、小さな物語も不可欠だと感じたからかもしれません。
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)
Edit and Writing by Junki Shibata (kontakt)